躁状態のときの特徴

健康

身体や行動の特徴

医師
医師

躁状態とは、気分が異常なほどに高揚した状態をいいます。

身体面ではエネルギーに満ち溢れているため、夜になってもろくに眠らず、活動しようとします。

眠ったとしても、早くに目が覚めてしまい、再び眠りに戻ることができません。

この「眠らない」「眠れない」といった睡眠障害は、躁状態のときの特徴として最もよく知られた症状の一つです。

重度の躁状態の人は、眠りたいと思わず、「眠らなくても平気」だと感じています。

そのため、2~3時間眠れば元気になる、あるいは一晩中眠らず動き回ることもあります。

体は消耗しているのに、本人は疲れや睡眠不足を自覚出来ず、さらに動き回り、さらに体を消耗していくという悪循環に陥ります。

一方、軽度~中程度の躁状態の人は、「眠りたい」と感じています。

それにもかかわらず眠れないので、不眠症に悩まされます。

身体面では、その他にも食欲や性欲が異常に高まることがあります

性欲の亢進は、ときに性的に逸脱した行動につながることもあります。

行動面では、次々と新しい計画を立てて、動き回ります。

しかし、その計画は到底達成できない無謀な計画であることが多く、結果、大きなトラブルや莫大な借金を抱えることにつながってしまうのです。

また、躁状態のときは、他人に対して過度に干渉して指図するなど、高圧的な態度をとりがちです。

そのため、周囲の人と衝突したり、怒らせたりして、自分の評判を落とすことになります。

感情や思考の特徴

躁状態のとき、本人は気分爽快で、全身にエネルギーが満ち溢れているように感じています。

何でもできる、失敗などしない、自分は正しい、誰よりもえらいなどといった万能感にとらわれ、将来に不安など何もなく、明るい人生が待ち受けていると確信しているのです。

躁状態のポジティブな思考や感情は、明らかに常軌を逸しているのですが、本人は病気であるという意識はなく、高ぶる思考や感情をコントロールすることも出来ません。

そのため、次のような問題が起こってきます。

自分は非の打ちどころのない完璧な人間だと思っているので、少しでも非難されたり、思い通りにならなかったりすると、イライラして怒りを爆発させることがあります。

また、頭の中では次々と新しいアイデアが湧いているのですが、集中力や注意力は散漫になっているので、考えがまとまりません

それでいて、物事を楽観的に捉えすぎているので、重大なことも深く考えず決断し、実行してしまいます。

例えば、よく知らない相手と婚約、入籍してしまったり、選挙に立候補したり、無謀な裁判を起こしたりすることがあります。

高級車を複数台購入して、数千万円、数億円単位の契約を結んでしまうこともあります。

躁状態は怒りっぽく、攻撃的になるのが大きな特徴ですが、一方で本人はとても気分がよいので、饒舌になります。

陽気で、たえず冗談をいい、よく笑います。

自信満々に熱く語るので、ときに説得力に満ちていることもあります。

躁状態しか知らない人から見れば、とても魅力的な人に映るかもしれません。

しかし、躁状態というのは、病気が引き起こしている症状です。

正しく理解し、対処しなければ、人間関係の破綻や人生の崩壊につながることもあるということを知っておいてください。

「誇大妄想」自分がすごく偉くなったように感じる

自分の現在の能力や状態を、実際よりもはるかに大げさに空想し、それを事実の様に思い込む状態です。

この症状は、軽度の場合は自信につながります。

たもも
たもも

この状態になったことがあります。。。

仕事や学業で成果をあげたり、考えていた計画がうまく運んだり、パワーアップした様子が人を引き付ける魅力になることもあります。

周囲からは普通のように見えますが、本人は「今までとは違う自分」を感じることもあります。

しかし、自覚はあってもわずかな変化なため、躁との繋がりを想像することはありません。

しかし、症状が重度になると問題が起こってきます。

自分は誰よりも優れていて偉く、他の人はみな無能だと信じ込むようになります。

その尊大な態度が周囲の人を不快にさせ、人間関係が崩れたり、職を失うようになることもあります。

ポイント

誇大妄想は、事情を知らない周囲の目には、”異常なうぬぼれ”に見えるかもしれません。

しかし、本人にとっては、「うぬぼれ」より「自信」という言葉の方が、実感に近いのです。

そのため、うつ状態になると、本人は非常に辛い気持ちをかかえるようになります。

自信を失うからです。

家族など周囲の人は、こういった心理を理解しつつ、治療へと導いてください。

「睡眠欲求の減少」眠らなくても平気、あるいは眠りたいのに眠れない

「睡眠欲求の減少」は、躁状態を特徴づける症状として、昔からよく知られています。

重度の躁の人は、「眠りたいと思わない」「眠らなくても平気」と感じています。

眠ることへの欲求が少ないのです。

実際、2~3時間眠れば元気になる、一晩中眠らずに動き回る、といった状態になります。

一方、軽度~中度の躁の人は、「眠りたい」と感じています。つまり欲求はあるのです。

それにもかかわらず眠れないため、「不眠症」に悩みます。軽い躁の人の不眠症には、いくつかのタイプがあります。

眠りにつくのが難しい

頭の中が考えでいっぱいになり、考えを切り替えられないため眠れません。もっとも多いタイプ。

眠り続けるのが難しい

3~4時間で起きてしまい、その後は「目が覚めているような眠り」を繰り返します。

単に早く起きてしまう

起きた後は、寝付けなくなります。このタイプはあまり一般的ではありません。

ポイント

重度の躁の人は、少しの睡眠でもよく寝た気分になり、すぐ活動を始めます。

注意したいのは、睡眠をとらずに動き回って体は消耗しているのに、その疲れを自覚出来ず、さらに動いてしまうところ

周囲の人が、ストップをかける必要があります。

「多弁」猛烈な勢いでしゃべり続ける

おしゃべりが止まらないことは誰にでもあり、双極性障害の症状とは限りません。

では、正常なおしゃべりと、躁状態のおしゃべりとはどこが違うのでしょう。

それはこの病気のもう一つの特徴である「急速な思考」とのかかわりです。

躁状態にある人の頭の中では、かなりのスピードで思考が駆け巡っていて、本人は自分が考えていることのすべてを説明しつづけなければならない、という衝動にかられます。

聞く側は、言葉の嵐を浴びているような状態になり、話を遮るのも難しくなります。

また、思考が速過ぎると、言っている内容も理解しづらくなります。

躁状態がもう少し軽い場合は、頭の中に面白い話が浮かび、いつもより喋りたくなる感覚があって、冗談を言ったりダジャレを飛ばしたりします。

周囲の人には、陽気になったように見えますが、それが躁の症状とは思わないようです。

ポイント

家族など周囲の人は、おしゃべりしている様子が、いつものその人の状態とかけ離れていないかどうか、気を付けてみてください

できれば、簡単なメモを残しておくとよいでしょう。

たもも
たもも

自分でもメモしておこう。

受診するとき、患者さんの過去の経緯を伝えるのに役立ちます。

「急速な思考」頭が急速に働き、次々に考えが浮かぶ

頭の中でスイッチが入ったようになり、急速に回転して、考えが次々に浮かぶ状態です。

躁のレベルによって、症状のあらわれ方は異なります。

軽度

陽気な気分になり、アイデアが次々に浮かんで創造力が高まります

生産性があがり、仕事がどんどん捗る様に思えます。

中程度

頭の中で次々と考えが回っていって、バラバラになり、出発点がなんだったのかわからなくなります。

中には優れた考えもありますが、しだいに不安が混ざり、悪い方へと考えてしまうこともあります。

重度

アイデアは浮かびますが、無関係につなげてしまい、創造力は崩壊します。

考えが飛んでしまい、さらに進むと、自分でも何を言っているか分からないほど錯乱することもあります。

また、重度の人は、読書をしても内容が頭に入らないため、同じページを繰り返し読み続ける、といったことが起こります。

ポイント

躁のどんな症状も、うつ症状と結合する可能性がありますが、「急速な思考」も深刻なうつと組み合わさることがよくあります。

躁とうつの特徴が同時に見られる混合状態の一つで、注意が必要です。

「注意力散漫」一つのことに集中できない

一つのことに注意を向け続けていられないのは、「急速な思考」とも関連があります。

例えば、多くの計画を一度にやってしまおうと手をつけるとします。

しかし、気が付くとやっていることが次々と変わり、一つも成し遂げられない、といったことが起こります。

躁が中程度になると、気持ちが勝手にどこかへ飛んでしまって白昼夢のような状態になることもあります。

「注意欠陥多動性障害(ADHD)」とよく似た状態で、双極性障害とADHDには何らかの繋がりがあると考えられています。

ポイント

双極性障害とADHDの、両方の症状がある場合は、まず双極性障害の治療を行います。

治療によって気分が安定してくれば、考えがまとめられ、分別のある行動がとれるようになります。

「痛ましい結果」躁の危うさが、こんな行動をとらせる

躁状態にある人は、危険をかえりみない行動をとったり、衝動的に間違った選択をしてしまうことがあります。

そのため、人生を脅かすような痛ましい結果をまねいてしまいます

このような行動をする背景には、愉快なことへの欲求や、衝動性の高まりがあるといわれます。

本人には、病気であるという自覚がなく、自分の行動は正当だと思い込んでいますので、ブレーキが利かず暴走してしまうのです。

患者さんを受診する際には、多くの医師が、こういった危険行為をしたことがあるかどうか質問します。

医師
医師

危険行為は、双極性障害であるかどうかを判断する一つの目安になります。

たもも
たもも

例えば、どんな行動があるの?

痛ましい結果をまねく行動

  • 浪費:必要のないものを次々と買うなどして、軽躁では万単位、重度の躁状態では10万単位で、お金を湯水のように浪費することがあります。自己破産に至ることも。
  • 無謀な投資:あり得ない儲け話に投資したり、気が大きくなって株相場にのめり込んだりします。何百万~何千万円の借金を負って、経済的に破綻するケースもあります。
  • 危険行為:車のスピード運転、普段はしないような路上での無茶なパフォーマンスなど、危険をかえりみない命知らずの行動をすることがあります。
  • 違法行為:ことの善悪が分からなくなり、会社のお金を使いこむなど、衝動的に違法な行為に走ることがあります。
  • 物質の乱用:薬やドラッグを乱用したり、アルコール依存症になることもあります。
  • 逸脱した性行動:性欲が亢進し、多くの異なった人と次々に関係を持ったりして、性的に逸脱した行動をとることがあります。こういった人は、離婚などで人間関係が壊れたあと、自分が躁状態だったと気づき、医師を受診することがあります。
たもも
たもも

そんな感じ。

そんじゃー、またね(‘ω’)ノ

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